Amazonのプライムビデオで見られる、作品の紹介&レビューです(一部、観られなくなってしまったものもそのまま掲載しています)。※2022年12月現在
以前からAmazonプライムビデオでは「最強のふたり」なども配信されていましたが、去年(2021年)にはAmazonオリジナルの「MIXTE 1963 (ヴォルテール高校にようこそ)」が制作・配信されるなど、日本で楽しめるフランス語作品も増えてきました。
フランスの映像作品は、社会問題や実在の人物をモデルにした作品が多いような気もしますね。
スペシャルズ!
原題「Hors Normes」(直訳:規格外/複数形なので、”尋常じゃない男達”といった感じでしょうか)
パリに実在する自閉症患者の支援施設の存続に奔走した、男性二人をモデルにした映画です。監督は「最強のふたり」を制作したエリック・トレダノ(Éric Toledano)。
病院すら匙を投げるような自閉症患者さんたちを分け隔てなく受け入れ、社会的に自立できるように支援するためのブリュノのマリク。
しかし、施設は無許可で、かつ常に満杯状態で火の車状態の運営のため、政府から監査を受け閉鎖の危機にさらされます。
日本語タイトルにあるように最終的には施設は存続されることになるのですが、無私の愛を注ぐ彼らの姿には本当に感動しました。
ドキュメンタリー風な撮影手法が取り入れられているのか、迫り来る緊張感がある上に、「この人達は本人?」とすら思えるほどの演技。
色々と考えさせられる作品でもあります。評価も高いですし、見られるうちに見ましょう!
私は確信する
原題「Une intime conviction」(直訳:内なる確信)
ある日突然失踪した女性(スザンヌ・ヴィギエ)の大学教授の夫が、妻への殺人容疑で裁判にかけられた「スザンヌ・ヴィギエ事件」を題材にした映画です。
主人公は、被告人ジャック・ヴィギエの無実を信じて、彼の支援者として奔走するシングルマザーのノラ。
この映画のすごいところは、「実際の事件を題材にしている」上で、実際の事件に関わった人物(ヴィギエ一家やヴィギエ氏の弁護士等)が実名で出てくるところ。
もちろん、画面上で演じているのは俳優さん方ですが、台詞などは実際の裁判で発言されたものが採用されており、非常にリアリティが強い作品になっています。
主人公の女性ノラは架空の人物ながら、監督自身が実際にヴィギエ氏の支援をした経験があり、それを多分に反映させているとのこと。
私はこの事件を全く知りませんでしたが、愛人が絡む愛憎劇や「完全犯罪」のように見える状況から、フランスではゴシップの話題になるほどの注目を浴びた事件だったそう。
ヴィギエ氏の弁護を担当したデュポン=モレッティ(Eric Dupond-Moretti)弁護士は、2020年にフランス司法大臣に就任しています。
鑑賞後に、以下のリンクなどを読むと、より事件への造詣が深まるはずです。
※以下リンクはネタバレを含むため、結末を映画で知りたい方は見終わってからアクセスしましょう!
- Disparition de Suzanne Viguier : comment son mari est devenu le suspect idéal | RTL (スザンヌの夫は、どう”理想の容疑者”に成り得たのか ※ポッドキャストあり)
- Dans l’intimité d’un procès | Canal Crime (YouTube) ジャック・ヴィギエ氏を追ったドキュメンタリー
- モデルはフランス法相 未解決事件が題材の仏映画『私は確信する』| 朝日新聞GLOBAL+
エール!
原題「La Famille Bélier」(直訳:ベリエ一家)
後に「コーダ あいのうた」の元ネタとなった、2014年のフランス映画です。※「コーダ あいのうた」は2021年アカデミー作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞
私は先に「コーダ」を観てしまっていたため、ストーリーには既視感が強かった(当たり前)ですが、フランス語であることをモチベーションにしてなんとか観ましたw
家族は背景などの設定は多少異なりますが、ストーリーの流れは「コーダ」と同じです。英語でなく仏語でまず話を楽しみたい方は、先にこちらの「エール!」を観ましょう。
手話は国により異なります(更に言えば、地方でも”方言”のように差があったりします)。英語リメイクの「コーダ」と、このオリジナルの「エール!」を見比べるのもいいかもしれませんね。
高校生のフランス語ですが、比較的シンプルな会話で聞き取りやすく、手話の部分以外は字幕を見ないようにして鑑賞チャレンジしてみてもいいですよ!
9人の翻訳家
原題「Les traducteurs」(直訳:翻訳家たち)※Amazonプライムビデオでは2022年10月31日終了
フランスを代表する俳優のランベール・ウィルソン、「イミテーションゲーム」でカンバーバッチ演じる主人公の少年時代を演じたアレックス・ロウザーが出演のミステリー。
登場人物は邦題の通り、9人の翻訳者たちなのですが、俳優さんたちももちろん外国出身の方々。
皆さん、フランス語が非常に堪能で、観ている仏語学習者としては(自分の仏語の酷さを前に)凹みましたw
トリックがわかってからの2回目の鑑賞も、伏線にニヤリとしながら楽しめます。
ランベール・ウィルソンのイケオジぶり(映画では酷い人格のキャラですが)には驚きます。若い頃も超イケメンだったんでしょうなぁ。
アレックス・ロウザーはこの映画のためにたった1ヵ月で仏語を習得したとか(wiki情報)。あまりの流暢さに、ジョディ・フォスターのように子供の頃からフランス語で教える学校に行っていたのかと思いましたが、違うんですね。語学力があって羨ましい限りです・・・。
最高の花婿 アンコール
原題「Qu’est-ce qu’on a encore fait au Bon Dieu」※Amazonプライムビデオでは2022年11月3日終了
それぞれに違う外国人と結婚した4人の娘を持つ夫婦と、多国籍の婿殿たちが繰り広げるコメディー。前作「最高の花婿」の続編となっていますが、これ単独でも十分面白いです(私は第一作目は観ていませんが、楽しめました!)。
フランスに住んだことのある方なら、フランス社会にいちいち苦しむ?婿殿たちの気持ちが「わかるわ~!」なんて思いながら観られるはず!
残念ながら日本人婿は含まれていませんが、それでも外国人として「フランス社会の窮屈さ」を感じるところは非常に共感しながら観ました。
でもそれが、全くシリアスでなく、コメディーとして昇華させているところが素晴らしい。もちろん最後はハッピーエンド(?)。
フランスでも10人に一人が鑑賞したという大ヒット映画。気楽に観られて、それでいて実にフランスらしいストーリーの映画です。
MISS ミス・フランスになりたい!
原題「MISS」
小さい頃から「ミス・フランスになる」のが夢だった美少年が、大人になって、仲間達に助けられながら男性であることを隠してミス・フランスに挑戦するヒューマンストーリー。
実際に主演を演じられている俳優さんは、現実でもユニセックスモデルという主人公と同じ名前を持つアレクサンドル・ヴェテール。そもそもは彼をモデルに作られた映画だそう。いや実際、完全にヴィジュアルが女性にしか見えないんですけど・・・(さすがに声は男性ですが)。
こういったマイノリティーの配役に、実際にその人物を俳優として起用するというのも、実にフランスらしいです。
アレックスさんの美しさには女性でもうっとり出来るほどなのですが、映画的には登場人物達の心理描写については詰めが甘いかなと感じました。
ミス・フランスは、フランス人が大好きなテレビコンテンツだそうです。私は観たことなかったなぁ(てか、テレビなかったし)。
同性婚やジェンダーレスの時代が進む中で、「女性らしさを追求することとは!ミス・フランスとは!」という考え方に一石を投じる、こちらもフランスらしい映画ですね。
大統領の料理人
原題「Les Saveurs du palais」(直訳:宮廷の味)※Amazonプライムビデオでは2022年11月6日終了
初の女性の大統領直属料理人としてミッテラン大統領に2年間使えた、ダニエル・デルプシュ(Danièle Mazet-Delpeuch)氏をモデルに作られた伝記映画です。主演はフランスの国民的女優、カトリーヌ・フロ。
カトリーヌ・フロは、本当に品があって素敵なんですよねー。
仏語版Wikipediaによると、大統領の料理人を辞めたときの理由が、実際と映画では多少違うよう。映画はよりドラマチックに表現されているようです。
次々と出てくる美しいフランス料理にも、ついうっとりしてしまいます。私もフランスから持ち帰った料理本を、また開いてみたくなりました。
大統領の料理人として尽力する姿にはもちろん、脈々と受け継がれているフランス料理への畏敬の念を禁じ得ません。素敵な映画です。
グレートデイズ!夢に挑んだ父と子
原題「De toutes nos forces」(直訳:私たちの全ての力で)※Amazonプライムビデオでは2022年11月6日終了
実話を元にした、脳性まひの息子と父が、二人でトライアスロンにチャレンジする物語。
映画の舞台はフランスですが、モデルとなった親子はアメリカ人で、「チーム・ホイト」として知られています。
いわゆる「感動映画」なので、最初から結末は見えてしまっている部分もありますが、ロケがすごいです。ニースの街を貸し切って!?アイアンマンのレースが撮影されています。
フランス映画のすごいところ再び。LGBTや障害を持つ俳優をそのまま同じようなマイノリティに配役している点なんですよね。日本はまだまだです。
息子ジュリアンの周りを取り巻く人たちの優しさにはただただ癒やされます。「エール!」と似たジャンルの映画ですが、「エール!」に比べて極端すぎる表現がなく見やすかったです。
シェフ!
原題「Comme un chef」(直訳:シェフみたいに)※Amazonプライムビデオでは2022年11月13日終了
ただただ笑える、ジャン・レノ出演のコメディー映画です。
料理の才能を持ちながら失業を繰り返し、甲斐性なしの主人公ジャッキーが、三ツ星レストランのシェフ、アレクサンドルと出会い、二人で美味しい料理と人生をを模索していく物語。
こんなんありえないでしょ!w な展開は、子供の頃に見ていた「志村けんのだいじょうぶだぁ」を思い出させましたw
ジャン・レノも、昔に比べればちょっとふっくらしましたが、まだまだ若いですよね!
気楽に見られるので、気分が沈んでいるときや疲れている時にこそ、元気がもらえる映画です。彼らが変装するシーンは日本人ならめちゃくちゃ楽しめます。
ローズメイカー 奇跡のバラ
原題「La fine fleur」(直訳:美しい花)
「大統領の料理人」にも出演(主演)された、国民的大女優カトリーヌ・フロが主演。
いやいやそれは無理があるよ!とツッコミたくなるコメディー展開が軸ですが、そこに社会問題もさりげなく差し込んでくるところは、流石のフランス映画。
バラ園の経営者を支える女性を演じているのは、SKAM Franceで学校の看護師さんを演じていたOlivia Côteですね。演技が上手いんですよねー。
相変わらず品のあるカトリーヌ・フロですが、今回は頑固おばさんwを好演。イケメンの元ワル若者役Melan Omertaとの対比もイイですね。
ストーリーを通じて映し出されるたくさんのバラの美しさにうっとりしながらも、時々クスっとしながらリラックスした気持ちで観られる映画です。