Amazonのプライムビデオで見られる、作品の紹介&レビューです。※2023年5月現在。随時更新します。
以前からAmazonプライムビデオでは「最強のふたり」なども配信されていましたが、去年(2021年)にはAmazonオリジナルの「MIXTE 1963 (ヴォルテール高校にようこそ)」が制作・配信されるなど、日本で楽しめるフランス語作品も増えてきました。
フランスの映像作品は、社会問題や実在の人物をモデルにした作品が多いですね。
最強のふたり
原題「Intouchables」(直訳:触れられない、触れてはいけない※複数形)
下半身不随のお金持ちと、面接で雇われた彼の世話をするスラム出身の黒人の友情を描いた、実話を元にしたヒューマン・コメディー。

話題になった映画なので、ご存じの方も多いと思います。まだ観てなかったら是非!
くすっと笑えるところもありながら、社会風刺もしっかりと入れているところはさすが、フランス映画。
私たちはどうしても、「障害者」とくくられてしまっている方たちに対して心にハードルを作ってしまいがちです。自然と「普通の友達」として接するドリス(オマール・シー)の姿には、やはりはっとさせられました。
オマール・シーは、フランスでも人気のNetflixドラマ「ルパン」でも主役を勤める、人気俳優です。
この映画の元となったエッセイ、「Le Second Souffle」もオススメです。
私は確信する
原題「Une intime conviction」(直訳:内なる確信)
ある日突然失踪した女性(スザンヌ・ヴィギエ)の大学教授の夫が、妻への殺人容疑で裁判にかけられた「スザンヌ・ヴィギエ事件」を題材にした映画です。
主人公は、被告人ジャック・ヴィギエの無実を信じて、彼の支援者として奔走するシングルマザーのノラ。
この映画のすごいところは、「実際の事件を題材にしている」上で、実際の事件に関わった人物(ヴィギエ一家やヴィギエ氏の弁護士等)が実名で出てくるところ。

もちろん、画面上で演じているのは俳優さん方ですが、台詞などは実際の裁判で発言されたものが採用されており、非常にリアリティが強い作品になっています。
主人公の女性ノラは架空の人物ながら、監督自身が実際にヴィギエ氏の支援をした経験があり、それを多分に反映させているとのこと。
私はこの事件をまったく知りませんでしたが、愛人が絡む愛憎劇や「完全犯罪」のように見える状況から、フランスではゴシップの話題になるほどの注目を浴びた事件だったそう。
ヴィギエ氏の弁護を担当したデュポン=モレッティ(Eric Dupond-Moretti)弁護士は、2020年にフランス司法大臣に就任しています。
鑑賞後に、以下のリンクなどを読むと、より事件への造詣が深まるはずです。
※以下リンクはネタバレを含むため、結末を映画で知りたい方は見終わってからアクセスしましょう!
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Disparition de Suzanne Viguier : comment son mari est devenu le suspect idéal | RTL(スザンヌの夫は、どう"理想の容疑者"に成り得たのか ※ポッドキャストあり)
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Dans l'intimité d'un procès | Canal Crime (YouTube) ジャック・ヴィギエ氏を追ったドキュメンタリー
エール!
原題「La Famille Bélier」(直訳:ベリエ一家)
後に「Coda コーダ あいのうた」の元ネタとなった、2014年のフランス映画です。※「Coda コーダ あいのうた」は2021年アカデミー作品賞、脚色賞、助演男優賞を受賞

私は先に「コーダ」を観てしまっていたため、ストーリーには既視感が強かった(当たり前)ですが、フランス語であることをモチベーションにしてなんとか観ましたw
家族は背景などの設定は多少異なりますが、ストーリーの流れは「コーダ」と同じです。英語でなく仏語でまず話を楽しみたい方は、先にこちらの「エール!」を観ましょう。
手話は国により異なります(さらに言えば、地方でも"方言"のように差があったりします)。英語リメイクの「コーダ」と、このオリジナルの「エール!」を見比べるのもいいかもしれませんね。
高校生のフランス語ですが、比較的シンプルな会話で聞き取りやすく、手話の部分以外は字幕を見ないようにして鑑賞チャレンジしてみてもいいですよ!
MISS ミス・フランスになりたい!
原題「MISS」
小さい頃から「ミス・フランスになる」のが夢だった美少年が、大人になって、仲間達に助けられながら男性であることを隠してミス・フランスに挑戦するヒューマンストーリー。
実際に主演を演じられている俳優さんは、現実でもユニセックスモデルという主人公と同じ名前を持つアレクサンドル・ヴェテール。そもそもは彼をモデルに作られた映画だそう。いや実際、完全にヴィジュアルが女性にしか見えないんですけど・・・(さすがに声は男性ですが)。
こういったマイノリティーの配役に、実際にその人物を俳優として起用するというのも、実にフランスらしいです。

アレックスさんの美しさには女性でもうっとり出来るほどなのですが、映画的には登場人物達の心理描写については詰めが甘いかなと感じました。
ミス・フランスは、フランス人が大好きなテレビコンテンツだそうです。私は観たことなかったなぁ(てか、テレビなかったし)。
同性婚やジェンダーレスの時代が進む中で、「女性らしさを追求することとは!ミス・フランスとは!」という考え方に一石を投じる、こちらもフランスらしい映画ですね。
ローズメイカー 奇跡のバラ
原題「La fine fleur」(直訳:美しい花)
「大統領の料理人」にも出演(主演)された、国民的大女優カトリーヌ・フロが主演。
いやいやそれは無理があるよ!とツッコミたくなるコメディー展開が軸ですが、そこに社会問題もさりげなく差し込んでくるところは、流石のフランス映画。

バラ園の経営者を支える女性を演じているのは、SKAM Franceで学校の看護師さんを演じていたOlivia Côteですね。演技が上手いんですよねー。
相変わらず品のあるカトリーヌ・フロですが、今回は頑固おばさんwを好演。イケメンの元ワル若者役Melan Omertaとの対比もイイですね。
ストーリーを通じて映し出されるたくさんのバラの美しさにうっとりしながらも、ときどきクスっとしながらリラックスした気持ちで観られる映画です。